思い起こしますと一昨年、日本マクドナルド事件東京地裁判決において、店長の管理監督者性が否定され、企業実務にも大きな衝撃が走りました。
その後、一部行政指導等の中には、同東京地裁判決を根拠に、管理監督者たるものは全社的な経営に関与していなければならず、店舗などの組織をいかに労務・経営管理していても管理監督者にあたらないとするものが散見され、大変強い違和感を感じておりました(以前述べたブログはこちら)。同判決の規範部分に対する批判的検討として、拙「ファーストフード店店長の管理監督者性」(季労222号)、峰隆之弁護士著「管理監督者問題とは何か」(労働法学研究会報2432号)などがありますが、少数説の感がありました。
これに対して、今回の菅野「労働法(第9版)」では管理監督者問題に対して、相当に踏み込んだ記述がみられます(p284以下)。特に以下部分に大変刺激を受けました。
「近年の裁判例を見ると・・・これを企業全体の運営への関与を要すると誤解しているきらいがあった。企業の経営者は管理職者に企業組織の部分ごとの管理を分担させつつ、それらを連携統合しているのであって、担当する組織部分について経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることが「経営者と一体の立場」であると考えるべきである。そして、当該組織部分が企業にとって重要な組織単位であれば、その管理を通して経営に参画することが「経営に関する決定に参画し」にあたるとみるべきである」。
その上で菅野先生は日本マクドナルド事件の結論については、注22において「店長の権限と役割からは、店長の業務にのみ従事しているのであれば十分に管理監督者と認められえたが、シフト・マネージャーの業務が加わったことによって、労働時間規制を適用除外するには不適切になったと思われる」 とします。
菅野先生の明快かつ周到な記述に及ばないにしても、日本マクドナルド事件東京地裁判決に対する見解自体は前述の拙評釈も比較的近いものがあると思われ、私的には大変勇気づけられました。峰論文と比較すると、更にその近時性を感じました。
いずれにしましても、同菅野先生の記述を受けて、判例法理等において、管理監督者の判断基準が明確かつ妥当性を有し、何よりも予測可能性が高いものとなることを願います。
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