2015年3月20日金曜日

「職場の安全・健康管理の基本」(労務行政)の出版

 拙書「職場の安全・健康管理の基本」(労務行政)が出版されました(amazonはこちら

 同書は労働安全衛生法の解説本ですが、特に事務系職場の新任・中堅安全衛生スタッフ(衛生管理者、衛生推進者など)向けの実務入門書になればと執筆したものです。
 
 一般に掴みづらい労働安全衛生法の全体像、事務系職場の労災防止対策、労基署対応などを分かりやすく解説するほか、過重労働対策、ハラスメント防止、本年12月施行のストレスチェック制度への企業対応などの最新問題にも目配りしています。ぜひお買い求めいただければ幸いです。
 
 なお労務行政HPにおいて見本がUPされていますので、ぜひご覧ください(こちら)。

目次
Ⅰ 法令解説編――労働安全衛生法の概要

1 労働安全衛生法の概要

2 労働安全衛生法における規制の概要

3 平成26年改正労働安全衛生法の概要

4 安全衛生管理規程

5 安全衛生管理計画

Ⅱ Q&A編-8のテーマ・60の留意点

1 労働安全衛生管理体制編

2 労災防止対策編

3 労働基準監督署からの指導編

4 民事損害賠償請求編

5 長時間労働による健康障害防止対策編

6 ハラスメント問題に関する企業対応編

7 健康管理体制編

8 ストレスチェック制度編


2015年3月16日月曜日

ベトナムにおける「労働力輸出」産業の実態と問題点(季労248-208)

 季刊労働法の最新号(こちら)に標記の論文が掲載されています。北大大学院の兄弟子である斎藤善久准教授が執筆したものですが、一読して鳥肌が立ちました。これは大変な労力と研鑽を重ねて書かれた極めて価値の高い論文です。

 本論考はベトナムからの外国人技能実習の送り出しと受け入れ・失踪をめぐる法的・実務上の課題を十分に明らかにした学術論文ですが、その充実した内容を十二分に担保するのが、同門として良く知る「斎藤さんの凄み」です。

 例えば「筆者は・・ハノイ市郊外の複数の送り出し機関でボランティアの日本語講師等として潜入調査を行い・・・それぞれ実情を聴取した。」などの記述を読むと、斎藤さんにしか出来ない仕事と思え、絶句するほかありません。

 この実地・裏付け調査があるからこそ、送り出し機関・受け入れ機関そして失踪後の技能実習生の実相が説得力をもって伝わってくるものです。

 今後、本小論は外国人労働者問題を論じる際(特に母国での送り出し機関及び技能実習生の実情)、必読の文献になろうかと思われますが、一読者として、斎藤さんには、ぜひベトナムの技能実習生の実態と法的・制度的課題等をさらに思う存分書いて頂きたいものです。新書形式(岩波書店さん等)で、出してもらえないものでしょうかね。

2015年2月26日木曜日

管理職の継続的なセクハラ発言に対する出勤停止処分・降格の可否

 管理職の継続的なセクハラ発言に対し、懲戒処分としての出勤停止と人事権行使による降格処分をなすことが認められるのか。1審(処分有効)、高裁(処分無効)の判断が分かれていたところ、最高裁(最1小判平成27年2月26日)は結論として当該出勤停止と降格処分双方の有効性を認め、高裁判決を破棄自判しました(最高裁判決はこちら。また時事通信配信記事はこちら)。

 懲戒処分等を無効とした高裁判断を善解すると、懲戒権濫用法理(労働契約法15条)を前提に、まずは戒告処分、その次に厳重注意処分・・・出勤停止など、段階を踏んだ教育指導・懲戒処分がなされない限り、同濫用法理が求める「社会通念上相当」な懲戒処分ではないと解したようです。

 ただ本件の特徴としては、第1に加害者が管理職であること、第2に1年近く継続して悪質なセクハラ発言が繰り返しなされていた(発言内容等については最高裁判決p11の別紙参照)点が認められます。この点を十分に考慮すれば、注意処分などの段階を踏まずに出勤停止処分等を行ったことは、必ずしも懲戒権濫用法理における「社会通念に反する」ものとはいえず、やはり1審および本最高裁判断が妥当と思われます。