昨日、厚労省労働政策審議会雇用均等分科会を傍聴しておりました。育児介護休業法改正案についての審議が山場を迎えています。審議会は予定調和的なものが大半ですが、さにあらず。労働側が席を立つそぶりをみせたり、あるいは公益委員と事務方が叩き台の解釈について、やり取りするなど、傍聴者としては、聞きごたえ十分の審議会でした(笑)。
その場で、個人的に最も聞き耳を立てたのは、表題の労使自治と育児介護休業法の両立支援との関係です。現行の育児介護休業法では、労使協定を締結することによって、専業主婦(夫)がいる従業員からの育児介護休業請求権を失わせることが可能とされています。大半の企業では、労使協定を締結し、これらの権利行使を排斥しているものですが、今回の改正法では男性の育児参加を促進するべく、同適用除外を撤廃する方向で叩き台が示されています。
同日、使用者側委員からは、労使自治を尊重する立場から、法による「撤廃」は望ましくないのではないか、従来どおり労使で話し合いの上で、認めるか否か決すればよいのではないかとする意見が示されました。
これに対して、公益委員の樋口先生が以下のような趣旨で見解を述べられました(近日中に厚労省HPに議事録が掲載されるものと思われます。以下は私のメモからまとめた要旨です)。
(佐藤先生からの育児介護休業法を取り巻く環境が大きく変わっているとの趣旨の発言を引き取った上で)
専業主婦(夫)を有する配偶者が育児休業を取り、子育てに参加したいという個人的な願いを、集団的な労使協定で排斥することには限界があるのではないか。労使自治は当然、大切ではあるが、それも法の枠内にあるものではないか。
労働法学では、以前から労働協約の規範的効力の限界が論じられてきました。樋口先生のご見解は、その際の議論(西谷敏先生など)を思い起こさせました。近年の労働法制は高齢者雇用延長制度など、労使協定を様々な形で絡ませる傾向があります。今回の育児介護休業法改正の議論は、これに対する反省をもたらす可能性があるのか関心を持ちました。
育児介護休業法改正案については、次回の審議会で事務方から「素案」が示される見通しです。昨年とは一変して、なかなか調整に難航しそうな雰囲気を感じた次第です。
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