2008年11月9日日曜日

「変更解約告知」の混乱ー関西金属工業事件ーほか

 関西金属工業事件 大阪高裁平成十九年五月十七日判決
事案の概要・判決内容・評釈については、金井幸子氏判例評釈(名大法政論集)が大変、有益ですので、こちらをご覧ください。

 同事件では、会社側は深刻な経営難に伴い、いったん社員を退職させた上で、新たな労働条件(賃金額が4割減など)による雇用契約の募集を行いました。同募集に応じた社員すべてを再雇用するものではない(6名リストラ予定)ことを当初から明らかにしておりましたが、同退職・募集申込(これを「変更解約告知」と称している)に応じなかった社員10名全てを解雇しています。
 この解雇の効力が争われたものですが、そもそもここで会社側が主張するものが、「変更解約告知」といえるのかが問題となりました。というのが、従来から論じられてきた変更解約告知は、労働条件変更に伴う雇用維持か、あるいは変更に従わないことによる解雇かいずれを従業員側に選択させることに大きな意義がありました。つまり、変更であれば雇用維持されることが前提でしたが、本件では変更に応じたとしても、雇用が維持されるか否か定かではないところに大きな特徴があります。

 同高裁判決では「変更解約告知」であることを明確に否定しないものの、整理解雇と変更解約告知を分けて論じることはできないと指摘した上で、専ら整理解雇法理に照らして、あてはめを行い、本件解雇を無効としました。主に4要件でいうところの人選基準に問題がある(6名で十分であるにもかかわらず、10名を解雇した点)としたものです。

 結論は良いとしても、この会社の対応を「変更解約告知」と称してよいのか、違和感を覚えます。本事案はそもそも整理解雇であり、その中に従業員の労働条件変更が含まれていたと位置づけるのが適切ではないでしょうか。本件の「変更解約告知」と称する会社側対応は、専ら解雇回避措置のところで考慮すれば、それで足りるものと思われます(但し労働条件引き下げによる雇用維持に向けた対応が、解雇回避措置として高く評価されるかは疑問。やはり希望退職募集等が重視されると考える)。
 とすれば、本件は人選基準を明らかにせずに、労働条件変更を拒絶したもののみを解雇対象者として選定した合理性を問えば、結論を同じく導き出せることとなります。

 裁判所の判断基準はさておき、本事案のようなケースにおいて、会社側がどのような対応を取るのが適切であったのかが、課題として残ります。いずれにしても本事案のように労働条件引き下げと整理解雇を同時に行おうとするのは適当ではなく、事前に周到な準備の上で、対応を検討しなければならないことが明らかにされた点が実務的にも参考になります。

 話は変わりまして、吉祥寺で久し振りに京都町内会バンドのライブを楽しみました。バンド結成から12年、前身を含めると20年。あまりの長い付き合いに感慨無量(笑)。

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