2008年11月4日火曜日

採用担当者への法務面からの支援を考える

 私は以前、新卒採用業務のお手伝いをしたことがある。その際、採用部門が求人募集先の選定、説明会開催の段取り、応募者へのフォロー、採用選考、内定通知、内定者へのフォロー、内定式そして入社式、入社後研修等々、無数の業務に追われている姿を目のあたりにして、その多忙ぶりに大変驚かされた。そのうえ新卒採用であれば、「お兄さん」「お姉さん」的な親しみやすさを持ちつつも、社内調整も的確に行える能力が必要とされる。どの会社もリクルーターに優秀な人材が配置される傾向があるが、その業務の多忙さ、難しさからして納得させられた次第である。

 以上のとおり、ただでさえ難しい業務であるところに、最近のコンプライアンス問題が採用業務にも持ち上がってきている。労働法のルールは明快さに欠ける面があり、何が正しいのか答えが一つでない問題が多い。たとえば、採用面接時のヒアリング事項がある。厚労省はあるパンフレットにおいて、採用面接時に聞いてはいけない事項を示している。その中には、本籍地など納得できるものが多い反面、「尊敬する人」「愛読している新聞、雑誌」など一般によく質問される事項も含めてヒアリングを行わないこととされている。同パンフのみをみれば、これら事項はいずれも「聞いてはいけない」ということになろうが、企業側として、新卒採用では、本人の適性を幅広い視点から見極める必要がある。その見地から「尊敬する人」等をヒアリングすることは、職務関連性を有する質問にあたると解することが一概に合理性に欠けると思えない。

 このようにTPOに応じて、対応を検討せざるを得ないところに人事労務の難しさそして奥深さがあると感じるところではあるが、多忙にして人事労務の専門家ではないリクルーターにとってみれば、わかりにくいことこの上ないところとも思われる。また限られた時間の中、選考・内定などの手続きを進めていかなければならない担当者へのコンプライアンス上の支援はいかにして行うべきか。Q&Aなどの事例集作成など有益な手段を積み上げていかなければならないところ。今後の大きな課題の一つである。

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