長野県松本市の有田社労士にお招きいただき、「労働契約法施行に伴う就業規則の規定と運用点検セミナー」を峰隆之弁護士とともにご講演させていただきました。この講演に備えて、久し振りに労働契約法を勉強しましたが、勉強すればするほど味が出る「するめ」のような法律(もちろんいい意味!)であることを実感しました。
たとえば労働契約法7条、10条の但し書きで就業規則と特約を定めた個別契約との関係が定められています。一言でいえば、その特約は最低基準違反(就業規則)でない限り、優先させる旨の規定です。一見、当たり前のことが定められており、特段論ずべき問題がないようにも思えるところですが、さにあらず。例えば中途採用社員について、賃金その他労働条件を他の正社員と異なる厚遇で迎え入れることがあります。この場合、その者のために就業規則を別に定めることはなく、個別労働契約で済ませることが多いのではないでしょうか。
景気あるいは本人業績が順調であれば何の問題もありませんが、最近のような急速な経済環境悪化に直面した場合、一般の正社員はもちろん、中途採用社員も含め、賃金等の引き下げを検討せざるを得ない局面が生じることとなります。この場合、一般の正社員については、就業規則の変更が合理的であり、かつその内容が周知等されているのであれば、変更内容が労働契約の内容となることが労働契約法10条で確認されています。
それでは特約を結んだ中途採用社員の労働条件を就業規則変更で行うことができるのでしょうか。これについて、前述のとおり契約法10条但し書きが特約を優先する旨、規定していることから、就業規則変更による一律的対応が取れないということになります。
そのような問題が生じることを念頭に置きながら、中途採用社員等の個別契約管理を周到に行うことを、労働契約法が求めていることになります。労働契約法の奥深さがわかる一例です。
その他、労働契約法には様々な実務対応上の課題があります。同課題と実務対応上の留意点を3時間にわたって峰隆之弁護士とともに解説させていただいたものです。
講演をご静聴いただいた企業人事の皆様、そして有田先生ありがとうございました。また山崎、須田両先生には、帰りの列車含めてお付き合いいただきました。感謝する次第です。それにしましても、松本の10割そばと「大信州」は美味でした(笑)。
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