先日の日経新聞(2010.5.11)に「ゴールドウィン社 自転車通勤容認」との記事が掲載されていました。同社では通勤距離が2~20kmの社員を対象に自転車通勤を容認することとし、通勤手当もその距離数に応じて支給する事にしたようです。また同対象者には任意保険の加入を義務づけるとの事。
都内における朝の通勤電車を思うと、自転車通勤はとても魅力的に見えます。健康にも良いですし、電車賃もかからない事などから、いいことだらけに思えますが、企業サイドからの懸念として、駐輪場の確保と事故対応の問題があります。特に問題となるのが、通勤途上に本人が交通事故にあった場合に、通勤労災の対象となるのか否かです。
通勤労災の判断基準の一つとして、通勤が「合理的な経路および方法」による移動であることが求められます(労災法7条2項)。問題は自転車通勤が合理的な経路および方法によるといえるか否かです。特に通勤経路に他の交通機関があり、それが迅速かつ低廉な価格で用意されており、本人もそれを長期間利用していた場合、自転車通勤が「合理的な経路および方法」と言いうるのか
先日、労基署の担当者と雑談いたしましたが、同種事例は扱ったことがないようです(全国においては、すでに同種事案があるやもしれませんが)。たとえ話として、ある社員が2~3駅早めに下車して、ランニングして会社に向かう途中、事故に被災した場合、通勤災害にあたるか否かについては、担当者見解では該当しないとの事。同じように健康保持増進目的で自転車で通勤した場合は、他の適切な通勤経路・方法がある限り、認められないとする考え方は成り立ちうるものです。
その一方、厚労省は省を挙げて、健康保持増進に取り組んでいます。この動きから見れば、会社が公認する限り、通勤災害として認めるべきとの価値判断があってもおかしくはありません。
いずれにしても、当面はこの問題について、新たな行政解釈の登場を見守る必要がありそうです。それまでは任意保険の加入(被害者対応+自転車運転者本人分)を強制し、事故対応を行う他ないでしょう。問題は任意保険の適用・給付範囲ですが、これは労災保険と比べると、見劣りするのは間違いないところです。
0 件のコメント:
コメントを投稿