2010年1月6日水曜日

平成22年通常国会提出法案の動向1(雇用保険法)

 昨年末、厚生労働省労働政策審議会および研究会は立て続けに報告書・建議を取りまとめています。これらの報告書・建議を基に、厚労省は法律要綱案を策定し、審議会での議論を経て、最終的に内閣が通常国会に閣法として提出することとなります。

 人事労務関係で重要と思われるのが、次の報告書、建議です。
雇用保険法関係(こちら
派遣法関係(こちら
労災関係(こちら) ※研究会報告書

 今回は改正雇用保険法に係る報告書を取り上げます。雇用保険法については、被保険者の適用範囲の更なる拡大(週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み)および雇用保険料未納の事業場に勤務していた被保険者に対する救済措置(2年を超えて保険料納付を可能とし、遡及期間を拡大等)が、実務的に一定の対応を求める改正点になりそうです(詳細については、すでにこちらで紹介。なお未納事業場に対する新たな制裁措置については、同報告書で特に触れられず。今後の運用動向を注視する要あり)。

 そのほか、同報告書を基にした改正法案が成立した場合、雇用保険実務の見直しが求められそうであるのが、雇用保険被保険者証の管理です。同報告書を見ると、雇用保険未加入者が生じる背景として、同被保険者証が従業員に対して適切に交付されていないことを指摘しています。その上で使用者に対して同証の交付を確実に履行させることとともに、従業員本人が保有しているか自ら確認することを促すよう、運用手続きについて必要な改善を図るべきとします。
 企業における現状の取扱いを見ると、雇用保険被保険者証を従業員本人に逐次交付せず、会社保管とし、退職手続きなど必要となる際に本人に交付する取扱いとしてきた例も多いように思われます。その理由を尋ねてみると、労働者の紛失防止など、従業員の便宜として同取扱いを行ってきた企業が大半と思われますが、先の報告書に基づき、法・政省令、施行通達等が改正された場合、運用の見直しを行う必要があります。もちろん現状においても、会社保管はあくまで「本人同意」が大前提であり、従業員本人が被保険者証の返還を求めれば、これに応じなければならないのは当然です。

 その他、実務的に注目されるのが、被保険者資格取得手続きの際に、同取得届に添付する書類の簡素化です。今回の報告書では、被保険者の適用基準に係る雇用見込み期間を6ヶ月から31日に短縮することから(週20時間以上は変わらず)、パート比率が高い企業によっては、雇用保険被保険者取得手続事務が急増する可能性もあります。このような事務負担に配慮して、今回の報告書では、雇用保険の被保険者資格届において必要とされる添付書類を簡素化するとしています。現行では、添付書類について、雇用保険被保険者証、労働者名簿、出勤簿(タイムカード等)および契約書もしくは雇用通知書(週20時間~30時間未満(詳細についてはこちら))とされていますが、改正法が成立すれば、このうちのいずれかの添付書類は簡素化されることとなります。詳細については、改正法案成立を待つ必要があります。

0 件のコメント: