2009年12月15日火曜日

雇用保険法の改正動向について

 来年1月からの通常国会提出に向けて、厚労省内の各審議会が報告書取りまとめを進めつつあります。雇用保険法改正については、労働政策審議会職業安定分科会において順調に審議が進められており、今月9日には「検討のたたき台」が示されました(こちら)。新聞等においても、すでに報道されています(こちら 共同通信)。
 大きな改正としては、雇用保険料率見直し、雇用保険の適用範囲、雇用保険の遡及適用の3つと思われますので、以下、たたき台の内容を紹介いたします。

 まず雇用保険料については、来年度から引き上げの方向でたたき台が取りまとめられています。

 (平成21年度雇用保険料率(一般)) 1000分の8 → (来年度案) 1000分の12

 本年度の雇用保険料率の引き下げはリーマンショック後の経済危機に伴う特例的措置でした。しかしながら雇用保険財政の悪化が進んでおり、来年度も引き続き特例措置を維持することは困難なようです。これに対して、雇用保険財政に対する国庫負担割合は法律の付則どおり4分の1に戻す方向でたたき台が示されました。

 次に雇用保険の適用範囲ですが、現在「週所定労働時間20時間以上、6カ月以上の雇用見込み」との適用基準がありますが、これを「週20時間以上、31日以上雇用見込みの者」に見直す旨、たたき台が示されています。セーフティネットの拡大という観点からの対応といえます。その一方、受給資格については従前通りとしていますので、今後、雇用保険に加入するも、受給資格が得られない短期パート・アルバイトが増加する懸念はあります(資料としては、こちら p6参照)。

 最後に雇用保険の遡及適用ですが、従来は被保険者であったことが確認された日から2年前まで遡及して雇用保険に遡及適用できますが、2年以上前の期間については、遡及適用されませんでした。今回のたたき台では、2年の遡及適用では十分に労働者側が救済されないとの批判等を受けて、「2年以上前の期間において、事業主から雇用保険料を控除されていたことが確認された場合については、2年を超えて遡及して適用できることとしてはどうか」とされました。
 また事業主から見て気になる記述として、以下のものがあります。「また2年を超える遡及適用の対象となった労働者を雇用していた事業主のうち、事業所全体として保険関係成立届を提出しておらず、保険料を納付していないことが明らかな場合には、保険料の納付に関し、事業主に対して一定の措置を講ずることを検討すべきではないか」。この一定の措置は明らかにされていませんが、事業主に対してなんらかのサンクションを科す可能性が示唆されるところであり、成案となった場合、その詳細が気になるところです。
 さらに雇用保険料未納の問題が生じる背景として、労働者に対する雇用保険被保険者証交付が十分に履行されていないことが指摘されています。同たたき台において「運用面での必要な改善を図るべき」とされており、これも成案になれば、実務担当者としては注視すべき改正点となりそうです。

 そのほか、マルチジョブホルダー等への対応については、当初、厚労省担当課がその取り組みに意欲的に見えましたが、今回の改正には含まれず、「引き続き検討」となりました。複数の事業場にかけもちで勤務する契約社員、パート・アルバイトが増加する傾向にあるため、今後また検討課題となることは必至と思われるところです。

 12月末までには、同審議会は報告書を取りまとめ、来年1月からの通常国会に改正法を提出する段取りが進められています。今後の動向を注視する要があります。

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