2012年7月9日月曜日

【労働判例】郵便事業(期間雇用社員・雇止め)事件等

先日、出席した筑大労働判例研究会(江口教授、川田教授主宰)において、以下裁判例が検討されました。
郵便事業(期間雇用社員・雇止め)事件 広島高判岡山支部平成23.2.17労判1026-94。
澤路会員が的確なご報告をされ、大変勉強になりました

 事案としては、日本郵政公社時代から、配達業務(バイク)に従事していた非常勤職員が、郵政民営化後、初回の有期契約が締結されるものの、初回契約満了をもって更新されなかった点が争われたものです(雇い止め無効)。郵便事業側は公社時代も含め、同人の交通事故歴を雇い止めの理由の一つに挙げていました。

 原審は公社時代と民営化後の関係を明確に分けた上で、民営化後の雇用契約関係は初回をもって終了したことから、更新期待は認められず、雇い止め法理は適用されないとしました。その上で他の規定等に照らしても、交通事故歴などから契約更新しなかったことが違法とはいえないと結論づけます。

 これに対し控訴審判決は公社時代と同人が同じ業務・処遇であること、また契約更新歴が合わせて13回(4年10ヶ月あまり)にものぼることなどを指摘し、「公社およびYの業務にとって常時不可欠の存在であり、しかもその任用ないし雇用継続は強く期待されていたということができる」とします。その上で雇い止め法理の適用があるとし、解雇権濫用法理の類推適用から、本件雇い止めは違法と結論づけたものです。

 研究会では、同控訴審も公社時代の任用関係においては、明確に雇い止め法理の適用を排斥する一方、何故、民営化後に公社時代の実績も含めて「雇用継続の期待」が認定されるのか。本件雇い止め法理適用の理由付けを中心に議論が盛り上がりました。

 近年、社会保険庁、保育園その他公共部門の民営化が進められる中、同種の法的紛争が多発する可能性があるところ、本判決は先例としての意義があります。今後の裁判例の動向にも注目しておきたいと思いました。

 もう1本の報告は、生活保護開始申請却下取消訴訟等請求事件(東京地判平成23.11.8賃金と社会保障1553/1554-63頁)で、院生の吉田さんがご報告されました。生活保護制度が注目されている中、大変、興味深い事案でした。生存権とご本人の意思の尊重、社会的コスト。難しい問題です。

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