本日、労働政策審議会労働需給調整部会において、派遣法改正に向けた公益委員たたき台が示されました。同内容はこちらです。事前の報道のとおり、登録型派遣、製造業派遣の原則禁止とみなし雇用制度などが盛り込まれています。
色々と論じべき課題が多い中、とりわけ注目されるのが、「同資料6 違法派遣の場合における直接雇用の促進」における④いわゆる偽装請負の場合です。
同たたき台によれば、偽装請負の場合、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなすとしています。本日の審議会の席で厚労省側は、同申し込み時期は「違法派遣=偽装請負を行った時期であり、継続行為であればその端緒」と説明しました。また同申し込みに対して、派遣労働者が応諾した場合、ユーザー会社と雇用契約が締結されることとなりますが、その契約内容は派遣元との内容が引き継ぐと説明しておりました。つまり、元との間の契約が4ヶ月契約などの有期であれば、それがそのまま派遣先との契約内容となりますし、また賃金その他労働条件も原則として、元との内容がそのまま先に引き継ぐということになるとします。
それでは、社宅の貸与などを元が行っていた場合、先はどうすればよいのかという問題も想定されます。これについて厚労省側は労働条件の引き継ぎが不能なものについては、労働条件変更(ユーザー企業が派遣労働者に対して)を行えば良いと説明しますが、なかなかミステリアスです。
同みなし雇用制度について、三菱樹脂事件最高裁判決が認めた使用者の「雇傭の自由」に抵触するのではないかとする鋭い批判がなされておりました。これに対して、公益委員の先生から「公序良俗に反しない限り」との留保が同最高裁にもふされており、今回のみなし雇傭は違法派遣の場合にのみ適用されることから問題がないとの見解が示されました。しかし、この点はなお議論あるところと思われます(偽装請負とされる行為が全て「公序良俗違反」と解されるべきものか否かなど)。
その一方、同日付けで松下PDP最高裁判決が示されました。まだ判決原文を確認しておりませんが、報道等によれば、ユーザー会社との雇用契約確認請求については大阪高裁判決を破棄した上で、原告敗訴(ただし高裁判決における慰謝料請求一部認容は維持した模様)を自判したとのことです(asahi.com記事はこちら)。
最高裁が偽装請負時におけるユーザ会社との黙示の雇用契約成立を否定した一方、立法で偽装請負時のみなし雇用制度が創設されようとする点は、我が国のこれまでの立法制定過程を振り返ると、非常にちぐはぐな気もいたします。何よりも憲法29条等が保障する使用者の「雇傭の自由」を損なう立法であり、違憲立法審査の対象になりうるのではないか。法律畑から見ると、同派遣法たたき台は、憲法訴訟の対象になりうる懸念も感じております。
いずれにせよ、年内には同建議が取りまとめられ、年明けの通常国会に改正法案が提出される見込みです。様々な懸念を払拭し、実務的に堪えうるものとなりうるのか引き続き注目しております。
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