2009年6月29日月曜日

改正育児介護休業法成立について


 平成21年6月24日、参議院において改正育児介護休業法が成立しました。内閣提出法案に対し、衆議院で一部修正がなされたものが、参院において全会一致で可決成立したものです(成立法はこちら 参議院HP)

 内閣提出法案における改正ポイントは以前ブログでご紹介しております。また厚生労働省HPに見やすい資料が示されています(こちら)ので、そちらを参照いただくとして、ここでは短時間勤務制度の適用除外と企業名公表制度について解説いたします。

1 短時間勤務制度・所定外労働免除制度について
 まず本改正において、3歳未満の子を育てる労働者に対する短時間勤務制度と所定外労働免除制度の導入が新たに義務化されることとなりました。但し100人以下の労働者を雇用する事業主については、同改正の適用が猶予されています(公布日から3年以内に見直しの予定)。
 本改正の適用を受ける企業は、自社の就業規則・運用を再確認し、上記2制度が未整備の場合、施行(来年夏予定)までに、その準備を行う必要が生じます。

 その際、問題となるのが、同制度の適用対象労働者です。まず所定労働時間が3~4時間の労働者に対して短時間勤務制度導入の要があるかですが、厚労省審議会では1日6時間以下の短時間労働者は法令上、適用除外とすることが確認されています。
 これに関連して、1日の所定労働時間短縮は、1日6時間を上回る分の短縮措置が求められることになりそうです。

 次に職場の性質や実施体制等に照らして、所定労働時間短縮が困難な業務も想定されます。例えば国際線のキャビンアテンダントの業務などは、その性質上、所定労働時間短縮が困難といえます。あるいは流れ作業による製造業務などもその業務の性質や実施体制によっては、短時間勤務制度が困難である場合も考えられます。また労働者数が少ない事業場において、当該業務に従事し得る労働者数が著しく少ない業務なども、その実施体制上、短時間勤務制度の導入が困難なケースが想定されるでしょう。

 今回の改正では、このような業務の性質あるいは、業務の実施体制に照らして制度の対象とすることが困難な業務について、「労使協定」を締結することを条件に、短時間勤務制度等の適用除外とすることを認めました(但し、その代わりとしての配慮措置は必要)。

 本法改正への企業対応においては、同制度の導入準備とともに、上記理由から適用除外とする労働者層の検討と労使協定締結のための交渉が不可避ということになります。なお、審議会において、経営側から、時間的支障等から同労使協定が締結できない場合、特例として就業規則による適用除外制度を認めるよう主張されていましたが、厚労省事務局はこれを否定する回答を行っています。施行までに労使協定を結べない場合は、適用除外としたい労働者層含めて、本改正法が適用されることになるものです。
参考資料 短時間勤務について(論点) 審議会資料 (こちら
第90回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 (こちら


2 育休切りへの対応
 前述のとおり、衆院において同法案の一部修正がなされています。同修正において注目すべきは「企業名の公表制度」の前倒し施行です(政府案では公布日から1年以内とされていたものを、公布日から3ヶ月以内に修正)。
 現行法においても、育児休業申し出・取得を理由とした解雇その他不利益取扱いは禁じられており(育介法10条)、これに反する事業主に対して、厚生労働大臣は助言、指導もしくは勧告を行えることとしています(同法56条)。今回の改正では、この勧告に従わない事業主に対して、公表制度が新たに設けられることになりましたが、これを前倒しで施行するということです。

 この前倒し施行の背景には、「育休切り」といわれる育児休業等を理由とした解雇その他不利益取扱いの蔓延があるようです。厚労省が先日、公表した指導状況を見ても、その深刻さが伺えます(こちら)。
今回の改正では、これらの問題を踏まえて均等室の行政指導・労使紛争斡旋権限が大きく拡充されています。今後の均等行政の動きも、大変注目されるところです。

 

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