2009年4月24日金曜日

改正労基法における「代償休日」の謎

 先日、改正労基法の政省令要綱案が取りまとめられました(こちら)。残るは施行通達の策定です。同通達は、おそらくは5月~6月中には策定・公表され、今回の法改正に係る第一次資料はほぼ出そろうことになります。

 以前、本コラムにおいて代償休日についてコメントをいたしましたが(こちら)、審議会資料を見ておりますと、同制度はいよいよ混沌としてきた感があります。

 厚労省は審議会(09.3.27)における説明資料として、「代償休日の取得と割増賃金の支払い日」を配布しています(こちら)。これを見ると、代償休日に係る労使協定を締結している事業場において、賃金締切日に月間60時間を超過した残業が生じていた場合、社員に対して「代償休日を取得する意思があるか否か」早期に確認することとしています。その上で意思がある場合は翌月から2か月以内に取得させる一方、取得意思がない場合は5割増の割増賃金を支払うこととしています。

 同資料の図は理解できますが、企業実務において、このようなことが果たして可能なのでしょうか。素朴に疑問を感じるところです。例えば、以下A君のつぶやきをどう考えるべきでしょうか(大多数を占める声と個人的には考えておりますが)。

A君 この3か月は大規模なプロジェクトに参加しており、とても忙しい。今月は残業が60時間を超えており、人事から10日以内に(20日締め、当月末日払)に代償休日なるものを取得するのか、残業代を取るのか選択してほしいとの問い合わせが来ている。できれば休みを取りたいが、忙しいので、翌月・翌々月にそのような休日を取れるのか否かはっきりしない。どうすればいいのか。

 年休取得すら半分を切っている現状を見ると、社員本人の取得意思に重きを置く制度設計では、いよいよ活用が少なくなるものと思われます。むしろ同休日をどうしてもやるとするならば、会社側が健康配慮の観点からイニシアチブを取って、取得候補日を示し、本人同意の上で取得させる仕組みの方が、円滑に活用されるのではないでしょうか。施行通達の内容に期待したいところです。  

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