2008年12月30日火曜日

整理解雇法理について(解雇回避措置)

 拙稿「解雇回避措置論」労働法律旬報1502号34頁を久々に読み返しました。
 2001年、北大大学院の修士1年の際、道幸先生のご指導の下、整理解雇判例の共同研究の一環として書いた論文です。最近の経済情勢をみるにつけ、改めて整理解雇について勉強をしておく要があると思い、ここ10年くらいの整理解雇関係の文献を読んでいたのですが、その中に拙稿が含まれていた次第。

 書いてから読み返す機会もありませんでしたので、大変新鮮に読むことができました。案外書けていると思う一方、物足りない面も多々感じます。拙稿は整理解雇における解雇回避措置の中でも、希望退職募集に焦点を絞って、判例に見るその措置内容を分析しています。それはいいとしても、この希望退職募集その他解雇回避措置は整理解雇法理全体において、どのような位置づけを持つのか等、十分に検討し尽くしていない面も多々あることを実感しました。

 その後、整理解雇をめぐり参考となる論文が数多く出ていますが、その中で個人的に大変勉強になったのが神林龍編「解雇規制の法と経済」(日本評論社)所収の「整理解雇裁判例の分析」です。奥野先生、原先生が執筆された論考ですが、そこでは解雇回避「措置」ではなく、解雇回避に係る会社側の検討・準備こそが裁判所の判断において重きが置かれている旨、明快に論じられています。プロセス重視の視点から、整理解雇判例法理を改めて見直した論考です。

 私の中で腑に落ちない面はあるのですが、同論文を通じて、刺激を受けるところ大でした。その他、先生方の論文を読み返していますと、整理解雇法理について共通した問題関心を指摘することができます。それは、事業所閉鎖・会社解散等、あるいは経営効率化のための組織再編を目的とした整理解雇への法的対応です。そのうえ、会社分割と労働契約承継という問題が登場しています。これら複雑困難性が高まる整理解雇に対し、従来型の整理解雇法理で対応できるのか、法理を修正するとしても、どのような方向性が考えられるのか、課題は尽きないところです。来年に向けて、また新たな課題ができました。

 

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