2008年12月10日水曜日

育児休業法トリビア(夫・妻双方が育休を取れる?)

(Question)A氏(男性、36歳会社員)は、妻(会社員)、3歳の長女の3人世帯で生活していたところ、先月、妻が三つ子を出産しました。明日には妻が退院し、6人家族となります。妻は産後休暇明け後、1年間の育児休業を取得しますが、先日、真顔で「私だけでは4人の子供の面倒は見れません。あなたも育児休業を取って、3歳の長女の面倒だけでも見てほしい」と言われました。

 A氏も育児休業を取得することは可能なのでしょうか?なおA氏及びA氏の妻の会社には、育児介護休業法関係の労使協定がないことを前提とします。

 先日、読売新聞の大津和夫さんに「改正育児介護休業法案の動向」について、セミナー講演を頂きました。その際、話題になった問題です。結論からいえば、A氏が育児休業を取得することはできます。会社はこれを拒むことはできません。

 「そんなはずない」と思われた方が多いと思いますが、まず自社の労使協定をご確認ください。設問では労使協定がないことを前提としましたが、労使協定を締結し、「配偶者が専業主婦(夫)である場合、育児休業を取得させない」旨、明らかにしておけば、専業主婦(夫)のいる社員は育児休業を取得できなくなります。同協定は企業全体の7割で締結されているとのデータがあり、多くの企業ではあまり意識せずとも、そのような労使協定を根拠に、A氏の請求を拒むことが現状において可能です。

 しかしながら、先日も本ブログで取り上げましたが、この労使協定による適用除外を撤廃すべきであるとの議論が、今回の育児介護休業法改正案において検討されています。同法案が国会に提出され、成立すれば、A氏(といいますが、A氏の奥様というべきか)の願いがかなうことになるものです。順調に来年度の通常国会で成立すれば、施行が平成22年4月1日を予定しているとのこと。

 では法施行されれば、A氏含め、すべての社員が育児休業を取りだすかですが、実のところ、爆発的に増えることはないと思われます。育児休業中の所得保障の問題が残されているからです。雇用保険からの給付のみでやっていければよいのですが、給付水準が従前所得の5割程度にとどまることから、やはりどちらかが、働かざるを得ないと思います。あるとすれば、奥さんの退院後しばらく生活が落ち着くまで、あるいは長女長男の入学・入園時期などの短期間のみ双方が取得することは、ありうると思うところです。

 最後にトリビアを一つ。
  「奥さんの産後休業期間中(産後8週間まで)、夫は育児休業を取ることができる(労使協定があったとしても)」
 ※奥様が専業主婦であろうが、共稼ぎであろうが同じです。要はこの間は奥様も産後休業で休んでいるのであり、「育児休業」を取得している訳ではないので、夫が育児休業を取ることが当然可能となる)

 私も実はよく知らなかったのですが(お恥ずかしい)、上記のとおりです。A氏もまず奥様の産後休業中、思い切って育児休業を取って、その後しばらく続く「激動の子育て期」における生活設計を金銭面含め、相談しておくことが良策と思います。 なおA氏は今のところ私のことではありません、念のため(笑)。
 

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