2008年12月23日火曜日

(読書)「パリの女は産んでいる」中島さおり(ポプラ文庫)

「パリの女は産んでいる」中島さおり著(ポプラ文庫)
 2006年、フランスの合計特殊出生率は2.0パーセントを超えました。日本から見て、その出生率の高さは驚嘆に値します。仮にここまで我が国の出生率が持ち直したとすれば、懸案の少子高齢化問題、年金問題の多くが解消されることになります。

 では、フランスにおいてなぜ、これだけ合計特殊出生率が増加したのか。その疑問を「恋愛大国フランス」という観点から、ミクロレベルで描写したのが、本書です。実に読み応えがありました。日仏文化比較としても大変、勉強になります。特に「フレンチママのサポートシステム」、「大人中心のリラックス子育て」を紹介した4章、5章は考えさせるところ大です。

 少子化問題については、育児休業あるいは児童手当拡充、WLBの促進などマクロレベルで論じられることが多いのですが、これらの政策も個人レベルに影響を与えてこそ意味があります。どうも本書を読んでいると、お金の問題(金銭給付)も重要ですが、それ以上に親が「子育て、大人としての生活、仕事、休息」の4者のバランスに満足しうるためのサポートこそが決め手となりうると感じた次第です。

 この少子化問題については、答えはよその国にあるはずはなく、日本で見つけるほかありません。しかし、他国の取組や状況を知ることは、日本を相対化し、より深く問題への対応を考える上で有益ではないでしょうか。本書のような著作が多く読まれれば良いと思います。

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