2009年5月26日火曜日

改正障害者雇用促進法と特例子会社・企業グループ特例

 昨日、経団連の輪島忍氏が講師を務められた「改正障害者雇用促進法への企業の実務対応策」(労働開発研究会例会)を聴講しました(セミナー企画担当)。

 障害者雇用促進法の基礎(法定雇用率の考え方等)から、法改正事項、そして今後の動きとして注目される障害者権利条約批准に向けた対応、助成金まで多岐にわたり、誠に要領よくご講演いただきました。(改正障害者雇用促進法についての厚労省資料はこちら

 輪島氏の講演の中で非常に勉強になったのが、特例子会社設立に向けた動きです。厚労省は第二次補正予算において、特例子会社等設立促進助成金を創設し、同制度奨励を積極的に進めようとしているものです(千葉労働局による案内はこちら)。かなり手厚い奨励金ともいえ、会場でも同奨励金利用を契機に、特例子会社設立を真剣に検討しているとの声も出ておりました。

 しかしながら同じく話が出ていましたのが、特例子会社設立のハードルの高さです。実際に導入を検討すると、特例子会社の認定基準(こちら)とその運用、また社内的にコンセンサスを得られるかどうかなど、導入に向けたハードルが思いの外、高く感じられ躊躇する企業が多いようです。導入企業グループの大半が1000人以上規模の大企業であり、中小企業には敷居が高い制度の感があるやもしれません(※なお特例子会社の設立件数の実数をみると、ここ5年で急速に増加 2002年113社→2007年223件)

 このような声を受けてか、今回の法改正では、特例子会社を持たなくても、企業グループ全体で実雇用率を算定できる特例制度が設けられました(詳細については、こちら p6)。ただし、同パンフレットにあるとおり、すべての子会社において障害者雇用率が1.2㌫以上であることなど、一定の要件が課されています。これらの点をチェックの上、同制度活用を検討する方向も考えられそうです。

 また今後の課題ではありますが、障害者権利条約における障害者差別禁止、合理的配慮の理念と特例子会社制度、企業グループ特例との関係をどのように考えるか、大変難しい問題が残されています。厚労省の研究会が今年中に中間報告を出す予定とのことですので、注目したいと思います。

 なお季刊労働法の最新号(6月15日発売予定)は、障害者雇用問題を特集しております。研究者による力の入った論考が多数掲載されておりますので、ご関心のある方はぜひ(詳細はこちら

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