2009年9月16日水曜日

改正労基法における中小事業主の範囲について

 最近、来年4月から施行される改正労基法への対応に係る相談が増えてきています。その相談の中で多いものの一つとして、中小事業主の範囲があります。

 今回の改正では、月間60時間を超える時間外労働に対して、割増賃金率が5割に引き上げられたものですが、中小事業主については、その適用が猶予されることになりました(※法施行から3年経過後に改めて検討予定)。

 問題は、この中小事業主の範囲です。今回の改正法では猶予される中小事業主の範囲を次のとおり定めます。

 ①資本金の額若しくは出資の総額が
    小売業 5000万以下
    サービス業 5000万以下
    卸売業   1億円以下
    上記以外 3億円以下
または
 ②常時使用する労働者数が
    小売業 50人以下
    サービス業 100人以下
    卸売業   100人以下
    上記以外  300人以下
※事業場単位ではなく、企業(法人または個人事業主)単位で判断。また労働者数にパート・アルバイトは原則として含まれる(ただし日々雇用等は除く 中小企業庁Q&A Q4参照(こちら))。

 この①または②いずれかを満たした事業が、特別割増賃金引き上げが猶予される中小事業主となります。したがって、例えば小売業で労働者数が150人いるが、株式会社で資本金が1000万に留まる場合は、ここでいう「中小事業主」に該当し、特別割増については適用が猶予されることになります。

 分かりにくいのが、ここでいう業種の判別です。例えば、飲食業を例にしてみると、一般にはサービス業にあてはめられると思われます。その一方、総務省統計局が出している日本標準産業分類に目を転じると、大分類で独自に「M 飲食店・宿泊業」が設けられており、「Q サービス業」と異なる区分をされています(日本標準産業分類はこちら)。その上、中小企業庁が中小企業基本法に定める中小企業者の定義Q&Aをみると、何と飲食店は小売業と同じ取扱いをするとの表記があるものです(こちら Q9参照)。

 ここまで調べて頭がくらくらしてきましたので、管内の労基署に確認したところ、「局に聞いてください」との回答(このような対応は如何なものか・・・・)。そこで労働局労働時間課に確認したところ、大変、明快な表をご紹介いただきました。東京労働局HP等に中小企業の業種一覧がUPされております(こちら)。

 ちなみに施行通達には以下の記載が見られます。「法第138条の中小事業主」の判断における業種の分類は、日本標準産業分類(平成21年総務省告示第175号に基づくものであること」。どうも解せない気がいたしますが、まずはこの表をもって業種の判断をおこなうこととなります。

 先の飲食店については、一覧をみると、中小企業基本法に従い、「小売業」に該当することとしています。同様に「医療・福祉」、「教育・学習支援業」などは日本標準産業分類の大分類において独立していますが、「サービス業」に該当することとなります。なお「社労士事務所」「弁護士事務所」などの「学術研究、専門・技術サービス業」も大分類上独立していますが、同じく「サービス業」に該当するとのこと。資本金が5000万を超え、かつ常時使用する労働者数が100名を超えている同業者様がいらっしゃれば、改正労基法が晴れて全面適用されることになりますが、存在するのか否か、大変興味があるところです(笑)。

 改正労基法の中小事業主の適用範囲のとおり、「その他の業種」にあたるか、あるいは「小売」「卸売」「サービス業」か否かで、その労働者数および資本金等が大きく異なってきます。改めて、同表に照らし、自社がどの業種にあたるのか確認することが肝要です。

 なお一つの事業主が複数の業種にまたがる事業展開を行っている場合は、施行通達において以下の記載が見られます。ご参考ください。「一の事業主が複数の業種に該当する事業活動を行っている場合には、その主要な事業活動によって判断されるものであること。主要な事業活動とは、過去1年間の収入額・販売額、労働者数・設備の多寡等によって実態に応じて判断されるものであること」。

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