2009年2月24日火曜日

有期労働契約のルール法制化は進むか?

 先日の日経新聞等に「有期労働契約のルール法制化」に関する記事が掲載されていました。本ブログにおいても、民主党が先の国会において議員立法として提案した「有期労働契約遵守法案」について、取り上げたことがあります。今回の動きは、さながら政府版「有期労働契約遵守法案」提出の動きといえるかもしれません。

 実は有期労働契約に対するルール設定の動きは、今日までもなかった訳ではありません。かねてから「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に基づいて、労基署が有期労働契約に関し指導を展開していました。また昨年出された「有期契約労動者の雇用管理の改善に関する研究会報告書及びガイドライン」は法規制ではないにしろ、ガイドラインの形で事業主に対し、有期労働契約の雇用管理にあたり留意すべき点を示しています。
 これらは罰則等を背景とした法規制ではありませんが、有期労働契約に対するルール設定は少しずつ進められてきたものと思います。

 これに対して、我が国の有期労働契約に係るルールは以下の点で十分ではないという指摘も、かねてからなされていました。

 ・諸外国(フランス、ドイツなど)に見られるように、有期契約を締結する際の目的をあらかじめ規制すべきでないか(入口規制) ※ドイツ・フランスの法規制を知る上で参考となる文献としてJIL報告書「ドイツ・フランスの有期労働契約法制」(橋本陽子先生、奥田香子先生執筆分)

 ・有期労働契約の雇い止めについて形成されている判例法理を、立法化すべきではないか

 先の民主党提出法案はまさに、これらの問題意識に立ち、法制化を行おうとしたものです(なお同法案は前国会において参院可決後、衆院で否決され未成立)。

  今回の厚労省の動きは、学識経験者による研究会を1年4~5か月ほど行った上で2010年夏までに報告書をまとめる予定とのことです。その後のシナリオを 予想すると、2010年秋の労動政策審議会で議論の上、2011年の通常国会に法案を提出するシナリオではないかと推察されます(どこかで見たようなシナ リオのような・・・。労働契約法案のような空中分解(2006.6)が生じることのないよう願います(笑)。)

  先のJIL報告書など、すでにこの分野については、比較法研究が相当程度進められています。同研究会では更なる比較法研究はもちろん、我が国における有期 労働契約のあるべき姿、現状における課題、そして法制化すべき問題とその履行確保手段など踏み込んだ議論が展開されることを切望したいと思っております。 個人的には、特にエンフォースメントの問題が、この分野を論じる上で最も重要と感じるところです。

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