2010年9月7日火曜日

職場におけるメンタルヘルス対策検討会報告書に対する実務対応上の疑問

 厚労省HPに「職場におけるメンタルヘルス対策検討会報告書」がUPされました(こちら)。定期健診時に医師が問診を行った際、労働者のストレスに関連する症状・不調を確認し、必要と認められるものについて医師による面接を受けられるしくみを導入すること等が提案されています。今後は同研究会報告を基に、労働政策審議会で審議が開始され、来年の通常国会に改正労働安全衛生法案が提出される見込みです。

 すでに濱口先生がブログで迅速にコメントUPされておられますが(こちら)、当初同問題に関し懸念していた「労働者のプライバシー」については、以下のとおり相当配慮した形で報告書が取りまとめられています(拙ブログでの指摘はこちら)。

・医師は労働者のストレスに関連する症状・不調の状況、面接の要否等について事業者に通知しない

・医師による面接の結果、必要な場合には労働者の同意を得て事業者に意見を提出

 ざっと見た限り、企業における実際の運用に際して、以下の点に疑問が生じました。法制定の際には、そのうちの幾つかはクリアになるとは思いますが、さしあたり疑問点を挙げます。

1 定期健診を実施した医師が面接の要否等を直接、労働者に連絡することとされたが、その方法をどうするか(従来の定期健診の結果通知は医師→会社→労働者本人ルートで問題なし。医療機関等が直接本人宛送付している事例有)。

2 面談する医師を会社側があらかじめ指名しておくこととされているが(産業医をイメージしている模様)、同医師は精神科医でなくても良いのか(恐らくは良いとするのでしょうが、外科医・内科医の産業医が実際に実効性のある(※提案趣旨からすると自殺予防含む)面談を行うことができるか否か)。

3 同面談に対する費用負担は会社若しくは本人(会社との折半など)、あるいは労災保険・健保による負担が想定されているのか(健保の場合、自己負担分があるのか否か)。会社が負担する場合、「通知しない」こととの整合性を如何に保つか。

4 労働者側が同面談の受診拒絶、又は同面談に伴う意見提出を拒絶した場合、何らかの法的影響があるのか否か(安全配慮義務、労災の業務上外判断等)。

5 上記改正案によって、会社側の安全配慮義務又は労災の業務上外認定判断に何らかの影響がありうるのか。

 4、5については法改正がなされた後の判例法理の動向を見守る他ないところではありますが、大変に気になるところです。また1~3は企業が実務対応する際、必ず問題となる点と思われます(すでに研究会の中で議論されているところとも思われますが)。

 今後の労働政策審議会における議論が注目されます。

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