2014年5月14日水曜日

企業労働法実務入門(日本リーダーズ協会)について

 先日、盟友田代英治先生から倉重公太郎編「企業労働法実務入門」(日本リーダーズ協会)の献本を頂きました。誠にありがとうございます。本書は気鋭の若手弁護士である倉重先生、小山先生、岡村先生、石井先生、横山先生、田島先生と社労士の田代先生、原田先生が共同で執筆された労働法の入門書です。

 初めての地に旅に出る時、優れたガイドブックが手元にあれば大変心強いものですが、良いガイドブックは概ね以下の条件を満たしてます。
・見やすい地図や索引が付いており、すぐに知りたい情報を入手できること
・情報が簡潔かつ分かりやすく記されていること
・旅を楽しくするコラムや写真などが要所要所に配置されていること

 本書は分野は異なれど、上記条件を見事に満たしており、「企業労働法実務」の優れたガイドブックたりうるものです。

 まずお薦めできるのが、本書の「目次」と巻末の用語集です。研究者の手による労働法の概説書は法を体系的に習得させる目的があるため(当然に体系的理解は重要、学生さんはきちんと勉強しましょう(自戒をこめて))、実務家から見て、章立てや目次、索引が使い勝手の良いものは少ないように思われます。
 これに対し、本書は単独でメンタルヘルスの章(10章)や、派遣法などの重要な法規のみを取り上げる章(第12章)を設けるなど、章立てに周到な工夫が見られる上、巻末の用語集には「普通解雇・・懲戒解雇以外の解雇のこと  ●p」などのとおり、用語解説と参照ページが記され、企業担当者のニーズに見事に応えています

 また本書が何よりも優れているのは本文の内容です。優れた経営法曹、社労士による労働法・労務管理・社会保険に係る解説は、いずれも過不足なく、かつバランスが取れたものであり、安心して読める内容となっています。何よりも難しい法律・人事労務関係の用語が平易な表現で記されているのが素晴らしいと思います(これが本当に難しいのです)。

 その上、本書を魅力的なものとしているのが、各章の「コラム」「一歩前へ」です。初心者はもちろん、中上級者から見ても読み応えがあり、例えば「未消化の有休休暇と会計処理」(131p)では、国際財務報告基準と残存有休の関係という最先端の問題が取り上げられています。私も思わず読みふけった次第。その他、読み応えあるものが多く、労働法への興味をかき立てる内容となっています。

 以上のとおり、本書は「実務労働法」の素晴らしいガイドブックであり、ぜひ企業の人事労務担当者はデスクに1冊、常備されることをお薦めします。

 なお同著「終わりに」には、「本書をマスターした方の「今後の勉強方法」」として、「まずは実務で現に問題となっている箇所の専門書」に目を通すこと等が推奨されています。さいごに我田引水ではありますが、以下の問題に更に関心をお持ちの方には、ぜひ拙書もご一読いただければ幸いです(笑)。

●ブラック企業と呼ばれないための企業対応にさらに関心がある方には
「会社が泣きを見ないための労働法入門」(単著、日本実業出版社)
●メンタル不調による休職・復職に係る企業対応にさらに関心がある方には
→「企業におけるメンタルヘルス不調の法律実務」(峰隆之弁護士と共著、労務行政)
●精神障害の労災認定問題にさらに関心がある方には
→「精神障害の労災認定と企業の実務対応」(単著、日本リーダーズ協会)
●サービス残業・過重労働防止対策にさらに関心がある方には
→「ダラダラ残業防止のための就業規則と実務対応」(峰隆之弁護士と共著、日本法令)
 


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