先週末、北大の社会法研究会で「阪急トラベルサポート事件」(東京地裁平成22年5月11日)の判例報告を行いました。旅行添乗員に対する事業場外みなし労働適用の可否等が争われた裁判例ですが、同判決では、みなし労働の適用を否定し、原告請求を全額認容しています(時間外割増賃金および付加金請求)。
拙報告では、一部判旨に疑問を指摘するものの(携帯「所持」を否定要素とした点および飛行機搭乗中の労働時間性など)、概ね結論・理由を支持する報告を行いました。その席で先輩会員から「今朝の新聞に、同じ会社で事業場外みなし労働の適用を肯定した判決が登場した」とご紹介を受け、驚愕。
慌ててインターネット検索をしたところ、確かに同判決が出たようです(時事通信社 こちら)。
添乗員みなし労働は妥当 HTSに逆の司法判断
阪急トラベルサポート(HTS、大阪市)から「事業場外みなし労働制」の適用を理由に残業代を支給されなかったとして、派遣添乗員の女性が計約44万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は2日、適用を妥当と判断した上で約24万円の支払いを命じた。
事業場外みなし労働制は労働基準法で定められ、会社の指揮・監督が及ばず、労働時間の算定が困難な場合に一定時間働いたとみなされる。HTSをめぐっては5月に、別の添乗員の訴訟で東京地裁の別の裁判官が適用を否定する判決を出しており、判断が分かれる形となった。
田中一隆裁判官は「原告は単独で業務を行い、旅先に到着後も会社に必ず連絡して指示を受けたりはしていない。日程も大まかで変更などもあった」と指摘、労働時間の算定が困難な場合に当たると判断した。
その上で1日のみなし労働時間をHTS側の主張と同じく11時間と認定。労働基準法に基づき8時間を上回る3時間分と休日労働については時間外の割増賃金計約12万円、さらに同額の付加金も併せて支払うよう命じた。
判決によると、女性は2007年12月~08年1月にかけ、ヨーロッパへの二つのツアーに参加した。
私が報告した事件は主に国内ツアーが中心(JR、バスなどを主として利用)でしたが、上記事案は国外ツアーの添乗業務に対する事業場外労働みなしが争われていたようです。
上記2事案がかくも結論を異にしたのは、事案の相違性か(国内と国外の違い?)、あるいは事業場外みなし労働に係る規範とそのあてはめに起因するものか。東京地裁平成22年7月2日判決を早く確認し、分析したいところです。
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