「ダラダラ残業」は法律上の「労働時間」にあたるのか否か。
よく酒場で話題にのぼるのが、この問題です。この問いに対しては、もう少し条件設定が必要です。
①上司等が明確な指示をなし、残業に行っているものの、その成果物の質・量が労働時間に比して低い場合
②上司等が明確な指示をしていないが仕事を続けており、その成果物の量・質が労働時間に比して低い場合
まず①のケースについては、明確な指示があるため、労働時間性があることは法的に異論ないものです。仮に使用者側がその成果物やその過程に不満を有するのであれば、これに対して逐次、指示し、その改善を求め、なお問題が残る場合は懲戒処分等のステップを考えていくことになります(※懲戒処分の適法性には注意する要あり)。
実は①のケースについては、ホワイトカラー正社員層において稀であり、むしろ次の②が大半です。これについては、よく「明確な指示」がないことをもって、「使用者の指揮命令下」にないので、労働時間にあたらないという見解が示されることがあります。
しかしながら、多くのケース②では、上司が職場にいて、部下の所定時間外在社を「現認」しています。あるいは、その業務量を把握しているものです。これをもって「黙認」といいうるのか、そして事前ないし事後に上司から明確な指示がなくても、「黙示の指揮命令関係」が認められるか否かが問題となりえます。これについては、すでに裁判例の中でも黙示の指揮命令に基づく労働時間性を肯定した事案があります(ユニコンエンジニアリング事件・東京地裁平成16年6月25日労経速1882号3頁ほか)。
このように現状の結論からいえば①、②いずれのケースも「労働時間性」が認められやすい状況にあります。しかしながら、使用者側から見ると、事前の許可なく会社に残り、しかも仕事をしているかしていないのか分からないものを何故、「労働時間」と把握し、時間外割増賃金を支払わなければならないのか腑に落ちないところがあると思われます。
同問題のポイントとして、実は「休憩時間」の問題があります。次はダラダラ残業と休憩時間の関係を考えてみます。
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