昨年末からの雇用環境悪化は、よくバブル経済崩壊後の「失われた10年」の雇用環境と比較されることが多いと思われますが、幾つか大きく異なる点があります。その一つは大企業を中心とした成果主義賃金制度の「定着」ではないでしょうか。言うまでもなく、2000年前後から職能給から成果主義的要素を高める賃金制度への移行が進みました。その後、極端な成果主義賃金制度が運用上、様々な問題を抱えていることが指摘され、その修正がなされる動きがみられましたが、90年代の賃金制度と比べると、制度・運用ともに様変わりしている企業が多いと思われます。
この雇用調整局面化においては、売上・利益が低迷し、賃金引き下げへの企業シフトが高まることになります。従来は集団的な労使協議を経て、一律1割などの賃金引き下げを妥結し、就業規則・労働協約をもって賃金引き下げを行っていました。今でもそれが主流とは思いますが、成果主義的な年俸制などを導入している企業では、それとは異なる動きが出てくるものと思われます。
それは成果評価等を通じた個別協議の上での、賃金額引き下げです。では仮に個別協議がまとまらない場合で、かつ次年度も継続して就労し、会社も労務を受領していた場合、その賃金額はどのように考えるべきでしょうか。最近の裁判例をみると、中山書店事件、学校法人実務学園ほか事件、日本システム開発研究所事件、明治ドレスナー・アセットマネジメント事件など、年俸制における賃金引き下げの効力が争われる事案が目立つようになってきました。
この問題は今後、実務的にも大きな課題になると思われます。裁判例の分析が必要です。
0 件のコメント:
コメントを投稿