2009年2月11日水曜日

副業時に労災に被災した場合の平均賃金算出方法

 先日のブログで副業時に労災に被災した場合の法的問題を少しばかり検討してみました。その件で、ある先生からご助言を頂き、少しばかり調べたところ、2004年に以下のような動きがあったことを承知した次第。

 その内容とは、二重就労時に労災に被災した場合、労災保険給付を行うに際し算出する平均賃金について、就労先それぞれの賃金額を合算して計算するという方策が厚労省内の有識者研究会で検討されていたというものです(結論としては未改正。研究会報告段階における当時のNEWS,建議段階で「今後の検討課題」とされた経緯についてJIL報告書参照)

 実は昭和28年に、旧労働省はこの問題について通達を発出し、二重就労時の平均賃金算出は、被災先の事業所における平均賃金をもってこれに当てるとしました(昭和28年10月2日 基収第2048号)。この場合、特に本業を持つ社員が、副業先の短時間アルバイトで労災に被災した際は、非常に低水準の労災保険給付しか受けられないこととなります。

 2004年の有識者研究会では、上記のとおり、その見直しを求める報告書を取りまとめたものですが、その後の審議において、法改正・通達改正に至らず、今なお昭和28年通達が実務において維持されているものです。

 先日のブログで指摘したとおり、兼業を許可していた社員が過労死・過労自殺した場合、仮に業務上認定されたとしても、その平均賃金をどのように算出するかは、今なお不明確と言わざるをえません。例えば脳・心臓疾患が深夜のアルバイト先で生じた場合は、被災事業場がアルバイト先とされ、平均賃金も同アルバイト時給をもって算出することになるのでしょうか(なお労災保険の場合は、最低保障額が設定されており、これに修正される余地はある)。何らかの顕著な出来事がアルバイト先であれば別として、疲労蓄積型の脳・心臓疾患、精神疾患発症のケースについては、落ち着きどころが悪い結論のようにも思えます。この問題については、今後も引き続き行政動向等を注視しておく必要があると考えております。
 なおすでに同種事案について、労災認定がなされた例が報道されております(JILメールマガジン2007.5)が、同事案はパワハラも含まれている点にも注意が必要です。平均賃金額がどのように算出されたのかは、同記事では明らかにされておりませんが、同事案は本業先の平均賃金をもって算出したのではないかと推察されるところです。

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