セミナーで話すこと、ご質問を頂くことは、書くこととは違った気づきを与えてくれます。先日のセミナーで「ダラダラ残業防止のための就業規則規定例とその運用」をお話させていただきましたが、改めて労働時間の難しさを痛感させられます。
例えば、社員が次のステップ(昇進等)のため、終業後に社内資料を閲覧したいと申し出られたとします。この場合、同閲覧時間は労働時間といえるのでしょうか。このようなご質問を頂き、非常に大きな気づきを頂いた次第。結論からいえば、社員が自らの自己研鑽を目的に、会社に残り資料を閲覧することは、「使用者側の明示ないし黙示の指示がなく、業務性も低い(ない)」ことから、労働時間には当たらないと考えます。
しかしながら、同自己研鑽が上司から強制されていたり、あるいは本人の本務ないし近いうちに予定されている業務と密接不可分の場合は話が変わってきます。黙示の指示、業務性ともに認められることから、場合によっては「労働時間」とみなされる余地も残されていますので、その点は注意が必要です。
2000年以前は、多くの企業・官公庁は自己研鑽目的の在社に寛容(もちろん残業代は払っていませんが)であり、社員側もこの問題を正面から争う例は皆無でした。しかしながら、最近では労基署の監督指導はもとより、脳・心臓疾患、精神障害の労災認定・民事損害賠償例などでも、在社=職場における過重負荷と見る傾向が高いといえます。残業代請求事案などを見ていても、近年の裁判例の中には、ラフに残業時間数を認定する例などが散見されるところです。
企業のリスク管理からいえば、自己研鑽目的であれ在社させないのが原則と考えるほかない情勢です。私も駆け出しの頃、終業時間後に、先輩方の作成資料等を見ながら、仕事を覚えた一人として腑に落ちませんが、いずれにせよ企業において、自己研鑽目的での在社を認めるのであれば、その記録を何らかの方法で残すことに留意すべきでしょう。
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