2009年1月12日月曜日

「ワークシェアリング」論再燃とその因数分解

 最近、新聞紙上でよく「ワークシェアリング」という文字を見ることがあります。つくづく我が国のマスコミ等は、横文字好きだと思いますが、その中身をよくよく見てみると、その多くは次のように因数分解することができるのではないでしょうか。
  「受注減に伴う時短とこれに伴う賃金引き下げの可否」
 もちろん有識者による「多様就業型ワークシェアリング」や「オランダモデル」の日本への導入という議論が論じられているのは承知していますが、この問題を突き詰めると「同一価値労働 同一賃金」問題を避けてとおることはできません。言うまでもなく、我が国の人事労務管理の大きな特徴の一つは、パート・契約社員などのいわゆる非正規社員と正社員間の処遇格差の問題です。「同一「内容」労働 同一賃金」への道は、改正パート労働法施行によって方向づけがされたとはいえ、正社員等の職務内容が「柔軟」(悪い言葉でいえば「定かではない」)等の事情から、「同一価値労働同一賃金」原則が実務上も定着しているとされる欧州モデルとの相違は大きく、多様就業型ワークシェアリングの道は容易ではありません(なお後述の小倉先生論文が日本型ワークシェアリング論のブームとその終焉の背景と課題を余すことなく論じており、大変参考になります。)

 結局のところ、企業実務において今後、よく飛び交うであろう「ワークシェアリング」は産別組合との交渉の場はともかく、その多くは先の因数分解された問題、つまり時間短縮と賃金引き下げ問題をどう考えるかに尽きるものではないかと考えています。この時短策として浮上に上るのが、時間外労働時間数抑制、一時休業そして所定労働時間短縮とこれに伴う賃金引き下げということになる訳です。以前、小泉純一郎氏が厚生大臣に就任した際、省内において極力「横文字」を使うなと言明したことがあったそうです。「ワークシェアリング」という横文字については、そのご見解に賛意を表する次第です。なお「因数分解」した問題については、来月発刊のSR2月号、労働法学研究会報2.15号で解説する予定としております。

参考文献
ワークシェアリングに関する調査研究報告書(平成13年4月、厚労省)
ワークシェアリングに対する政労使合意(平成14年3月、厚労省・日経連・連合)
ワークシェアリング導入促進に関する秘訣集ほか(平成16年、厚労省)

小倉一哉氏(JIL)「ワークシェアリングは雇用促進に有効であったのか」(日労研573号)

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