2009年1月19日月曜日

住居喪失者に対する住宅支援をどう考えるべきか?

 先週土曜日、早稲田大学主催「「貧困の拡大とセーフティネットの役割-雇用と社会保障の交錯」に参加しました。各講演・パネリストの方の問題提起、質疑応答いずれも興味深いものがありましたが、その中で大変、刺激を受けたのが、岩田正美先生の問題提起でした。

 岩田先生は長年の貧困問題の研究から、我が国のホームレスの多くは、「会社が提供する寮・社宅から退去した者」であり、ここが欧米と大きく異なる点であると指摘した上で、次のような問題提起をされたと受け止めました(要旨 文責北岡)。

 勤労者(広い意味)の住居は、長年企業に多くを依存してきた。企業の提供は福利厚生的な性格がある一方、会社の事情も多分に含んでいる。今後、勤労者住居は企業よりむしろ公的支援(住宅手当等)を検討すべき時を迎えているのではないか。

 90年代以降を思い起こすと、家族・地域社会から離れた単身者層の一部は、建設会社等が提供する社宅・寮・付属寄宿舎等に入居し、日給月給で現場業務に従事していました。あるいは簡易宿に長期宿泊しながら、日雇仕事に従事していたものです(宮部みゆき著「理由」においても、舞台として登場している)。

 それがバブル経済崩壊後の公共工事の減少に伴い、建設会社等で雇用維持・確保することが難しくなり、社宅・寮閉鎖とホームレス化が進んできました。ここ数年、景気が持ち直したため、2000年前半のように騒がれることがなくなりましたが、昨年からの公共工事・民間工事(「マンション不況)の中、深刻化が懸念されるところです。このような中、新たに製造業派遣解約に伴う若年層の住居喪失問題が報じられているものです。

 従来、住宅支援の問題は建設省(現国土交通省)の担当とされ、厚生・労働省が展開する社会政策からは引き離されていました。社会分断を招くことなく、如何に社会政策として、住居喪失問題に対応することが可能か。先日のシンポジウムでは、西欧に見られる住宅手当等の公的給付などが検討課題として挙げられていました。配分できる財にも限度がありますが、政府・企業・地域社会・個人等が住宅に要する費用をどのように負担するのが公平妥当か、改めて考えさせられたシンポジウムでした。
 

 

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