読売新聞に「計画停電で休業は補償義務なし・・組合が撤回要請」との記事が掲載されています(こちら)。
計画停電で休業した企業は休業手当を支払う義務はないとする厚生労働省の通知が生活不安を招いているとして、派遣労働者やパートなどでつくる労働組合「全国ユニオン」は18日、厚労省に通知の撤回などを要請した。
労働基準法では、企業の都合で労働者を休業させた場合、企業は生活保障のため休業手当を支払うよう規定。しかし、厚労省は15日、「計画停電による休業に使用者責任はない」として、休業手当を支払わなくても同法違反には当たらないとする通知を全国の労働局に出した。
これに対し同ユニオンは、「無給休業は労働者、特に収入の低い非正規労働者の生存権を脅かす」と反発。同ユニオンには、震災による経営悪化を理由に解雇通告された被災者からの相談も寄せられているという。
(2011年3月18日21時29分 読売新聞)
たしかに同記事のとおり、計画停電中の休業に使用者責任がないとすれば、とりわけ時間給で働くパート・アルバイトに所得減少が生じる事となります。これに対して、ユニオン側は使用者に休業手当支払いを求めるようですが、計画停電という社会的強制(ないし要請)によって被害を受けているのは従業員だけではありません。何よりも営業活動を継続したいにもかかわらず、電力の供給がストップした結果、操業を停止し、経済上甚大な不利益を受けているのは、他ならぬ使用者といえます(もちろん計画停電を口実に他の動機・目的で計画停電の前後不相応な長時間にわたって休業するような事案があれば、その休業の一部が「使用者の責めに帰すべき事由」による休業に該当し、休業手当の支払い義務を負う)。
計画停電に伴う休業に対応したパート等への生活保障は大変に重要な問題ですが、同リスクは社会全体で引き受けるのが適切と考えます。そして、その要請に応えるのが、まさに社会保障制度の役割となりますが、残念ながら、現状では社会保障制度の方でうまく対応ができていないのが現実です。
例えば雇用保険法では、計画停電によって経済上影響を受け、休業を余儀なくされた事業主に対して、雇用調整助成金が休業手当相当額の一部(中小企業で原則8割)を助成する制度がスタートしています(こちら)。パート・アルバイトの休業についても、事業主が同制度を活用してもらえれば良いのですが、同労働者の労働時間が週20時間未満である場合は、雇用保険の被保険者に該当しないため、同雇用調整助成金の対象とならない結果を招いています。そもそも同制度は正社員の雇用保障を目的に設計されている面が多々あり、非常に手続きが煩雑です。
また大震災の被災地に所在する事業場では、雇用保険制度上、休職を離職とみなし、失業保険給付の対象とする特例措置が実施されています(こちら)。今のところ計画停電による一部休業については同様の対応は取られていませんが、計画停電時において同様の特例措置を講じることも検討に値します(一部休業への失業給付支給 現行制度との整合性が良いとはいえませんが)。以上のとおり社会保障制度とりわけ雇用保険法を中心に、パート等の休業に対する支援を手厚くする方策は大いに検討されて良いと考えるものです。
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