濱口先生ブログの「職場の組合はどこへ行った?」(こちら)を拝読し、あるパワハラ裁判例を思い出しました。
A生命保険ほか事件 東京地判平成21年8月31日(労判995-80)。
同事件は試用期間満了前に解雇(本採用拒否)された中途採用社員が、会社に対して解雇無効・地位確認等を行うとともに、労働組合の書記長に対して民事損害賠償請求を提起したものです。
同損害賠償請求の理由として、原告側が挙げるのが「労働組合に上司等からの嫌がらせについて相談したが、解決につながるような特段の措置を講じなかったこと」です。これが債務不履行(原告と労働組合書記長間)にあたるとして、慰謝料20万円の請求を行っています。
これに対して同地裁判決では会社側に対する請求を斥けるとともに、組合書記長に対する訴えについては「被告D(書記長)は、原告から本件組合の書記長としての対応を求められたのであって、個人としては、原告との間で何らかの契約法上の法的義務を負うことはない」とし、こちらも請求棄却しました。
上記判示部分を見ると、書記長個人はともかく、労働組合と組合員の間において、適切にパワハラ等の相談に対応しないことが債務不履行(そもそも組合と労働組合員との間に如何なる債権・債務があるのかが問題)に該当する余地があるか否かは判断されていません。今後の検討課題ではないかと感じるところです。
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