昨日付で東日本大震災に伴う労働基準法等のQ&A(第3版)が発出されています(こちら)。
第3版は「労働基準法第24条(賃金の支払)、労働基準法第25条(非常時払)、労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)、労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)、労働基準法第39条(年次有給休暇)等についての記載を追加」しているものです。
個人的に興味深いと思われましたのは、労基法33条(災害時の時間外労働等)のQ&Aです。これは災害等による臨時の必要がある場合に事業主は「その必要の限度において」時間外労働を命じることができる旨の定めですが、原則としては事前に労基署長の許可が必要です。しかしながら「事態急迫のため許可を受ける暇がないとき」については、事後的に届け出て許可に替えることも可能とされています(労基法33条1稿ただし書)。
今回の震災の影響で、電気・水道・ガス・鉄道などはもちろん、一般の製造・運送・建設業、また流通・サービス業(特に小売流通・飲食など)も早期の事業復旧を目指し、3月〜4月においては相当な長時間労働を各従業員にお願いしているところと思われます。そのため、36協定に定める時間外労働時間数、さらには特別条項をも上回る時間外労働に従事させたとする事業場も見られるところです。
これについて労基法33条の「事後届け」をなすべきか否かという問題がありますが、先のQ&Aは同届出を想定しているものではないようです(以下抜粋)。
Q8−1
今回の震災により、被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインの早期復旧のため、被災地域外の他の事業者が協力要請に基づき作業を行う場合に、労働者に時間外・休日労働を行わせる必要があるときは、労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」に該当するでしょうか。
A (中略)御質問については、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、当該労働の緊急性・必要性等を勘案して個別具体的に判断することになりますが、今回の震災による被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられます。
ただし、労働基準法第33条第1項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどしていただくことが重要です。また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。
33条の「必要な限度の範囲内」について思いのほか、抑制的な解釈を示したものです(「・・・することが重要」としていますので、必ず45時間以内でなければ認めないとするものではありませんが・・)。33条の事後届出のハードルを上げてきた印象があります。
いずれにしても、3月〜4月に長時間労働に従事させた従業員については、割増賃金の適正支払いはもちろん医師による面接指導の確実な実施と事後措置の検討・実施、更に衛生委員会における報告と再発防止対策の検討・実施が何よりも重要と思われます。
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