労務事情5月15日号の連載拙稿「労働行政&労働法制の潮流」(こちら)でも簡単に紹介しましたが、政府は「税と社会保障の一体改革」に非正規雇用の社会保険加入拡大を盛り込むことを検討しています。その加入要件について、厚労省が叩き台案を示してきたようです(共同通信5.22 こちら)。
非正規労働者の加入要件緩和へ 厚生年金で厚労省検討
厚生労働省は21日、パートなど非正規労働者の厚生年金への加入要件を大幅に緩和する検討に入った。雇用保険の加入要件を参考に(1)労働時間が週20時間以上(2)勤務期間が31日以上―の2点に絞り込む方向で、収入を要件に加えず、中小企業に勤める人も含めることを検討する。少なくとも100万人以上の非正規労働者が厚生年金に加入でき、さらに増える可能性もあると試算している。
また、保険料の基準となる「標準報酬月額」の下限(9万8千円)を引き下げることも同時に検討。保険料負担を軽減し、払いやすくする。ただ、加入拡大には、経済界からは懸念の声があり、調整は難航する可能性がある。
ところで平成21年7月に衆院解散に伴い廃案となった法案(閣法)では、非正規雇用の適用拡大要件を以下の通りとしていました。
① 労働時間が週20時間以上
② 賃金水準が「月額98000円以上」(賞与、通勤手当、残業代含まず毎月支給額)
③ 勤務期間が1年以上であること
④ 学生は適用対象外
⑤ 従業員が300人以下の中小零事業主は当面猶予
これが先の検討案によれば、②の収入要件をなくし、③を31日以上と大幅緩和するものとの事(④は不明ですが、雇用保険では学生を適用対象としている関係から同じ取扱いとなる可能性有り)。更に⑤についても当面の適用猶予を行うか定かではないものです。
企業とりわけ非正規雇用の比率が高いサービス業への影響は大きく、今後の動向を注視する要があります。
【追記】5月23日夕方から開催されている政府の社会保障改革に関する集中検討会議において、厚労省から以下の資料が配付されています。同資料の7pに非正規雇用の社会保険加入要件拡大案が示されています(こちら)。
また朝日新聞報道によれば、管直人総理が社会保障改革の重点検討課題の一つとして、本問題を取り上げるよう指示したとの事(こちら)。
非正規社員への社会保険適用拡大など検討指示 菅首相
2011年5月23日11時28分
6月末に取りまとめる消費増税と社会保障の一体改革に向けて、菅直人首相は、正社員ではない非正規労働者に対する社会保険の適用拡大など3分野を重点検討事項として指示することを決めた。23日夜に開かれる「集中検討会議」(議長・菅首相)で表明する。
3分野はこのほか、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「こども園」創設など子育て支援強化と、医療、介護、保育などのサービス利用時の自己負担の総額に上限を設ける「総合合算制度」(仮称)の創設。
社会保障は、費用全体の7割を占める高齢者に重点が置かれている。そこで菅首相は、今回の一体改革で「全世代対応型」にかじを切る方針。3分野への重点指示で、就労や子育てなど現役世代に対する支援に加え、低所得者対策に力点を置く姿勢を明確にする。
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