今年の夏休みは、毎年恒例のニセコ北大クールセミナーにも行かず、妻の里帰りにも同行せず、家でせっせせっせと試験勉強をしておりました。その苦労が報われ、無事、社労士試験に合格いたしました。今月中に手続きが済めば、来月早々から社会保険労務士という肩書を新たに持つことになります。これから、この資格と良い付き合いができるよう、日々切磋琢磨してまいる所存です。今後ともご指導の方、よろしくお願いいたします。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1107-1.html (社労士試験について 厚労省HP)
2008年11月7日金曜日
2008年11月6日木曜日
平成20年派遣法改正案の動向
どうする、どうなる派遣法改正案
今、労働法制において最も注目されているのは、派遣法改正案に他なりません。
11月4日、政府は派遣法改正案を閣議決定し、本国会に政府案を提出いたしました。政府案として取りまとめるまでが大変な難産でしたが、ここから先もその苦難の道に変わりはありません。むしろ更なる断崖絶壁の山道をのぼっていく運命のようです。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1104-1.html 派遣法改正法案要綱(政府案)
http://www.roudou-kk.co.jp/archives/2008/09/20924.html 同改正法案の簡単なコメント
現在、会期中の臨時国会は11月30日を会期末として予定しています。3週間以上残されてはいますが、衆参ねじれ状態の中、スムーズに法案審議、可決が進められていくかは定かではありません。与党側は民主党案に対し一定の譲歩を行い、修正案を取りまとめることにより、会期末までの成立を目指していたものと思われます。現に民主党案と政府案を比べてみると、日雇い派遣規制の対象を「30日」(政府案)とするか、「2か月」(民主党案)とするかが目立った相違点であり、その他の点については、さほど大きな対立点はないように思えます(労働法の視点からみると、民主党案にはその他、派遣先への労組の団交権保障、派遣先との均等待遇など目を引く点はあります)。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=13148 民主党派遣法改正法案
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_4cfb.html (濱口桂一郎先生コメント)
しかしながら民主党は党内で取りまとめていた民主党案をそのまま国会に提出するのではなく、他の野党との協議の上、改めて政府案への対立法案を提出するかまえを見せています。
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008110601000745.html 共同通信2008.11.06
他野党は日雇い派遣規制のみならず、登録型派遣の全廃などを求めており、政府案との隔たりは大きいものです。民主党が他野党との「共闘」を意識すればするほど、本国会における派遣法改正案の成立は難しいと思われます。
仮に派遣法改正案が本国会で先送りをされた場合はどうでしょうか。まず年末、年初の解散総選挙があった場合は、政府案(民主党等が対立法案を提出した場合は、同対立法案含む)は廃案となります。また改めて、閣議決定の上、出しなおす必要が生じますが、その際、どの政党が「与党」であるかは「神のみぞ知る」こととなります。
これに対し、解散総選挙が先送りされた場合は、次の通常国会において、改めて審議されることとなりますが、先の構図がそのまま引き継がれます。
審議がこの調子で先送りされ続けた場合は、最高裁が松下PDP事件、いよぎんスタッフサービス事件に対する判断を示す可能性が出てきます。この場合、同上告審判決が立法にも、相当程度影響を及ぼすものと思われるところです(最高裁がそのような「使われ方」を嫌って、あえて判決を先延ばしする可能性もあるとは思いますが・・)。
いずれにしましても、派遣法は本年末から来年にかけて、大きく変わっていく過程にあることは間違いがなさそうです。
今、労働法制において最も注目されているのは、派遣法改正案に他なりません。
11月4日、政府は派遣法改正案を閣議決定し、本国会に政府案を提出いたしました。政府案として取りまとめるまでが大変な難産でしたが、ここから先もその苦難の道に変わりはありません。むしろ更なる断崖絶壁の山道をのぼっていく運命のようです。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1104-1.html 派遣法改正法案要綱(政府案)
http://www.roudou-kk.co.jp/archives/2008/09/20924.html 同改正法案の簡単なコメント
現在、会期中の臨時国会は11月30日を会期末として予定しています。3週間以上残されてはいますが、衆参ねじれ状態の中、スムーズに法案審議、可決が進められていくかは定かではありません。与党側は民主党案に対し一定の譲歩を行い、修正案を取りまとめることにより、会期末までの成立を目指していたものと思われます。現に民主党案と政府案を比べてみると、日雇い派遣規制の対象を「30日」(政府案)とするか、「2か月」(民主党案)とするかが目立った相違点であり、その他の点については、さほど大きな対立点はないように思えます(労働法の視点からみると、民主党案にはその他、派遣先への労組の団交権保障、派遣先との均等待遇など目を引く点はあります)。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=13148 民主党派遣法改正法案
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_4cfb.html (濱口桂一郎先生コメント)
しかしながら民主党は党内で取りまとめていた民主党案をそのまま国会に提出するのではなく、他の野党との協議の上、改めて政府案への対立法案を提出するかまえを見せています。
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008110601000745.html 共同通信2008.11.06
他野党は日雇い派遣規制のみならず、登録型派遣の全廃などを求めており、政府案との隔たりは大きいものです。民主党が他野党との「共闘」を意識すればするほど、本国会における派遣法改正案の成立は難しいと思われます。
仮に派遣法改正案が本国会で先送りをされた場合はどうでしょうか。まず年末、年初の解散総選挙があった場合は、政府案(民主党等が対立法案を提出した場合は、同対立法案含む)は廃案となります。また改めて、閣議決定の上、出しなおす必要が生じますが、その際、どの政党が「与党」であるかは「神のみぞ知る」こととなります。
これに対し、解散総選挙が先送りされた場合は、次の通常国会において、改めて審議されることとなりますが、先の構図がそのまま引き継がれます。
審議がこの調子で先送りされ続けた場合は、最高裁が松下PDP事件、いよぎんスタッフサービス事件に対する判断を示す可能性が出てきます。この場合、同上告審判決が立法にも、相当程度影響を及ぼすものと思われるところです(最高裁がそのような「使われ方」を嫌って、あえて判決を先延ばしする可能性もあるとは思いますが・・)。
いずれにしましても、派遣法は本年末から来年にかけて、大きく変わっていく過程にあることは間違いがなさそうです。
2008年11月5日水曜日
職場内の飲酒を伴う会合後の災害は通勤災害か?
国・中央労基署長(通勤災害)事件 東京高裁H.20.6.25(労判960-16)
事案の概要
総務部門次長が、同部門主催の会社内会合終了後、帰宅途中に地下鉄入口下り階段から転落し、死亡したことが労災法上の通勤災害に該当するか否か争われた事案。労基署は通勤災害に該当しないとし、不支給決定処分としたところ、遺族が同不支給決定処分の取り消しを求めたもの。1審は遺族の請求を認め、不支給決定処分の取り消しを命じた。これに対して国側が控訴。
判決 原判決取り消し
コメント
職場内で飲酒を伴う会合がなされることは、以前に比べて少なくなったとはいえ、今なお多くの企業でみられるところです。本事案では、5時間近く続いた会合(17時ー22時)終了後、帰路についた総務部門次長の転倒事故が「通勤災害」に該当するか争われました。
1審はこの会合すべてを「業務」と判断しました。同会合において、被災者が総務次長として、従業員からの様々な相談・不満を聞いていたことから「業務性」を認めたものです。これに対して、控訴審では一転して判断を異にしました。17時から19時前後までの会合までは業務性があるとしたものの、19時から22時までの会合は業務性のある参加ではないと判示しています。その根拠として、裁判所は①被災労働者が通常19時には退社していること、②開始時刻からの時間の経過等から、19時前後には本件会合の目的に従った行事は終了していたとするものです。
これについて、1審判示の視点からみると、19時以降も従業員からの相談対応等を行っており、19時で「業務」と切断されることは相当ではないとの見解も成り立ちえます。控訴審では、この指摘に対して特段答えていませんが、察するに飲酒を伴う会合という特殊性を前提にすれば、2時間程度で業務と切断するのも、やむを得ないと考えます。
自らの乏しい経験を思い起こしてみても、飲酒を伴う会合は通常2時間程度で終わるものであり、それを超える場合は、私的関係を含めたお付き合いの色彩が強まると思われます。もちろん2次会、3次会のかなり煮詰まった段階(酩酊状態)で、仕事の話をすることもありますが、それをすべて「業務」とし、終了後の帰路をすべて「通勤災害上のリスク」と扱えるかどうかは違和感があります。飲酒を伴う会合については、業務性が認められたとしても2時間程度とするのは、社会通念に照らして相当ではないでしょうか。
また本件においては、控訴審段階で国側が新証拠を提出し、被災者が相当な酩酊状態にあったことが立証されています。強度の酩酊状態に陥っていた段階での転倒事故が、通勤災害上の保護対象となるか否かも疑問を感じるところです。したがって、控訴審の認定事実を前提とすれば、本判決の結論は相当と考えます。
本判決が提示した別の論点として、国側の新証拠提出時期の問題があります。控訴審段階で新証拠提出が許されるのか、そもそも国側の処分において前提とされた事実とは異なる事由を、訴訟段階で持ち出すことが可能かどうか。行政訴訟法との関係で更に踏み込んだ検討が求められる課題ではないかと思われます。
事案の概要
総務部門次長が、同部門主催の会社内会合終了後、帰宅途中に地下鉄入口下り階段から転落し、死亡したことが労災法上の通勤災害に該当するか否か争われた事案。労基署は通勤災害に該当しないとし、不支給決定処分としたところ、遺族が同不支給決定処分の取り消しを求めたもの。1審は遺族の請求を認め、不支給決定処分の取り消しを命じた。これに対して国側が控訴。
判決 原判決取り消し
コメント
職場内で飲酒を伴う会合がなされることは、以前に比べて少なくなったとはいえ、今なお多くの企業でみられるところです。本事案では、5時間近く続いた会合(17時ー22時)終了後、帰路についた総務部門次長の転倒事故が「通勤災害」に該当するか争われました。
1審はこの会合すべてを「業務」と判断しました。同会合において、被災者が総務次長として、従業員からの様々な相談・不満を聞いていたことから「業務性」を認めたものです。これに対して、控訴審では一転して判断を異にしました。17時から19時前後までの会合までは業務性があるとしたものの、19時から22時までの会合は業務性のある参加ではないと判示しています。その根拠として、裁判所は①被災労働者が通常19時には退社していること、②開始時刻からの時間の経過等から、19時前後には本件会合の目的に従った行事は終了していたとするものです。
これについて、1審判示の視点からみると、19時以降も従業員からの相談対応等を行っており、19時で「業務」と切断されることは相当ではないとの見解も成り立ちえます。控訴審では、この指摘に対して特段答えていませんが、察するに飲酒を伴う会合という特殊性を前提にすれば、2時間程度で業務と切断するのも、やむを得ないと考えます。
自らの乏しい経験を思い起こしてみても、飲酒を伴う会合は通常2時間程度で終わるものであり、それを超える場合は、私的関係を含めたお付き合いの色彩が強まると思われます。もちろん2次会、3次会のかなり煮詰まった段階(酩酊状態)で、仕事の話をすることもありますが、それをすべて「業務」とし、終了後の帰路をすべて「通勤災害上のリスク」と扱えるかどうかは違和感があります。飲酒を伴う会合については、業務性が認められたとしても2時間程度とするのは、社会通念に照らして相当ではないでしょうか。
また本件においては、控訴審段階で国側が新証拠を提出し、被災者が相当な酩酊状態にあったことが立証されています。強度の酩酊状態に陥っていた段階での転倒事故が、通勤災害上の保護対象となるか否かも疑問を感じるところです。したがって、控訴審の認定事実を前提とすれば、本判決の結論は相当と考えます。
本判決が提示した別の論点として、国側の新証拠提出時期の問題があります。控訴審段階で新証拠提出が許されるのか、そもそも国側の処分において前提とされた事実とは異なる事由を、訴訟段階で持ち出すことが可能かどうか。行政訴訟法との関係で更に踏み込んだ検討が求められる課題ではないかと思われます。
2008年11月4日火曜日
採用担当者への法務面からの支援を考える
私は以前、新卒採用業務のお手伝いをしたことがある。その際、採用部門が求人募集先の選定、説明会開催の段取り、応募者へのフォロー、採用選考、内定通知、内定者へのフォロー、内定式そして入社式、入社後研修等々、無数の業務に追われている姿を目のあたりにして、その多忙ぶりに大変驚かされた。そのうえ新卒採用であれば、「お兄さん」「お姉さん」的な親しみやすさを持ちつつも、社内調整も的確に行える能力が必要とされる。どの会社もリクルーターに優秀な人材が配置される傾向があるが、その業務の多忙さ、難しさからして納得させられた次第である。
以上のとおり、ただでさえ難しい業務であるところに、最近のコンプライアンス問題が採用業務にも持ち上がってきている。労働法のルールは明快さに欠ける面があり、何が正しいのか答えが一つでない問題が多い。たとえば、採用面接時のヒアリング事項がある。厚労省はあるパンフレットにおいて、採用面接時に聞いてはいけない事項を示している。その中には、本籍地など納得できるものが多い反面、「尊敬する人」「愛読している新聞、雑誌」など一般によく質問される事項も含めてヒアリングを行わないこととされている。同パンフのみをみれば、これら事項はいずれも「聞いてはいけない」ということになろうが、企業側として、新卒採用では、本人の適性を幅広い視点から見極める必要がある。その見地から「尊敬する人」等をヒアリングすることは、職務関連性を有する質問にあたると解することが一概に合理性に欠けると思えない。
このようにTPOに応じて、対応を検討せざるを得ないところに人事労務の難しさそして奥深さがあると感じるところではあるが、多忙にして人事労務の専門家ではないリクルーターにとってみれば、わかりにくいことこの上ないところとも思われる。また限られた時間の中、選考・内定などの手続きを進めていかなければならない担当者へのコンプライアンス上の支援はいかにして行うべきか。Q&Aなどの事例集作成など有益な手段を積み上げていかなければならないところ。今後の大きな課題の一つである。
以上のとおり、ただでさえ難しい業務であるところに、最近のコンプライアンス問題が採用業務にも持ち上がってきている。労働法のルールは明快さに欠ける面があり、何が正しいのか答えが一つでない問題が多い。たとえば、採用面接時のヒアリング事項がある。厚労省はあるパンフレットにおいて、採用面接時に聞いてはいけない事項を示している。その中には、本籍地など納得できるものが多い反面、「尊敬する人」「愛読している新聞、雑誌」など一般によく質問される事項も含めてヒアリングを行わないこととされている。同パンフのみをみれば、これら事項はいずれも「聞いてはいけない」ということになろうが、企業側として、新卒採用では、本人の適性を幅広い視点から見極める必要がある。その見地から「尊敬する人」等をヒアリングすることは、職務関連性を有する質問にあたると解することが一概に合理性に欠けると思えない。
このようにTPOに応じて、対応を検討せざるを得ないところに人事労務の難しさそして奥深さがあると感じるところではあるが、多忙にして人事労務の専門家ではないリクルーターにとってみれば、わかりにくいことこの上ないところとも思われる。また限られた時間の中、選考・内定などの手続きを進めていかなければならない担当者へのコンプライアンス上の支援はいかにして行うべきか。Q&Aなどの事例集作成など有益な手段を積み上げていかなければならないところ。今後の大きな課題の一つである。
2008年11月3日月曜日
退職手続きの違法性とは?-ゴムノイナキ事件判決ー
ゴムノイナキ事件(大阪地裁平成19.6.15 労判957-79)
(事案) 勤務態度不良を理由とした業務指導の過程で退職した社員について、会社側が「自己都合」退職を前提に退職金、失業保険給付手続きを行ったことが違法とされ、会社都合退職による退職金および特定受給資格に基づく失業保険給付との差額分支払を命じた例(控訴後和解)
(コメント)結論・理由ともに反対
退職勧奨自体はこれまでも、その回数・頻度あるいはその言動等が不相当である場合、違法であるとされ、損害賠償の対象とされてきた。これに対して、上記事案では、退職勧奨の態様は問題ではないとされる一方、退職の手続きに違法性があるとされた珍しい例。損害賠償として、本来「会社都合」で退職手続きを講ずべきであったとして、差額退職金及び失業保険(特定受給資格)の支払を会社に命じている。
よくわからないのが、会社側が「自己都合」で退職手続きを処理し、退職金・失業保険手続きをとったことが、何故、損害賠償の対象となる「違法性」を帯びるのかという点。本判決の認定事実によれば、会社側の退職勧奨に態様上、問題はなかったとされており(むしろ「具体的かつ丁重な」指導であったと評価されている!)、退職事由が「辞職ないし合意退職」であることに間違いはない。
加えて本件についていえば、本人の勤務成績不良に伴う指導が契機となり、退職したものといえる。たしかに純然たる私的理由による退職ではないとしても、同退職手続きを「会社都合退職」で行うべきとする違法性があるといえるのか。そもそも、何が違法であるのか、判決文からは定かではない。強いて考えるとすれば、労働契約に付随する適正に「退職手続き」を行うべき配慮義務とでもなるのか。
また退職金の制度設計は、基本的に会社側にゆだねられている。いかなる場合に会社都合、あるいは自己都合で退職金を支給するべきかについても同様である。本判決では会社側の内規、過去の運用経緯などを検証することなしに一足とびで、本件の退職は会社にとってもメリットがあった等とし、会社都合退職金を支給すべきであったとする。しかしながら、前述の内規・運用経緯を評価することなしに、このような判断がなされるべきか大変、疑問を感じる。
最後に特定受給資格についても、本件がこれに該当するか否かは、はなはだ疑問。ハローワークの運用においても、同種事案であれば、おそらくは特定受給資格としないのではないか。その上、同失業保険手続きにあたり、従業員自体も退職事由を記載できる仕組みとなっており、労使の対立があれば、ハローワークが最終決定を行うこととしている。とすれば、会社側の失業保険手続きはその一部に過ぎず、退職事由の記載をもって「損害賠償の対象たる違法性」があるのか、改めて疑問の念を強くする。
(事案) 勤務態度不良を理由とした業務指導の過程で退職した社員について、会社側が「自己都合」退職を前提に退職金、失業保険給付手続きを行ったことが違法とされ、会社都合退職による退職金および特定受給資格に基づく失業保険給付との差額分支払を命じた例(控訴後和解)
(コメント)結論・理由ともに反対
退職勧奨自体はこれまでも、その回数・頻度あるいはその言動等が不相当である場合、違法であるとされ、損害賠償の対象とされてきた。これに対して、上記事案では、退職勧奨の態様は問題ではないとされる一方、退職の手続きに違法性があるとされた珍しい例。損害賠償として、本来「会社都合」で退職手続きを講ずべきであったとして、差額退職金及び失業保険(特定受給資格)の支払を会社に命じている。
よくわからないのが、会社側が「自己都合」で退職手続きを処理し、退職金・失業保険手続きをとったことが、何故、損害賠償の対象となる「違法性」を帯びるのかという点。本判決の認定事実によれば、会社側の退職勧奨に態様上、問題はなかったとされており(むしろ「具体的かつ丁重な」指導であったと評価されている!)、退職事由が「辞職ないし合意退職」であることに間違いはない。
加えて本件についていえば、本人の勤務成績不良に伴う指導が契機となり、退職したものといえる。たしかに純然たる私的理由による退職ではないとしても、同退職手続きを「会社都合退職」で行うべきとする違法性があるといえるのか。そもそも、何が違法であるのか、判決文からは定かではない。強いて考えるとすれば、労働契約に付随する適正に「退職手続き」を行うべき配慮義務とでもなるのか。
また退職金の制度設計は、基本的に会社側にゆだねられている。いかなる場合に会社都合、あるいは自己都合で退職金を支給するべきかについても同様である。本判決では会社側の内規、過去の運用経緯などを検証することなしに一足とびで、本件の退職は会社にとってもメリットがあった等とし、会社都合退職金を支給すべきであったとする。しかしながら、前述の内規・運用経緯を評価することなしに、このような判断がなされるべきか大変、疑問を感じる。
最後に特定受給資格についても、本件がこれに該当するか否かは、はなはだ疑問。ハローワークの運用においても、同種事案であれば、おそらくは特定受給資格としないのではないか。その上、同失業保険手続きにあたり、従業員自体も退職事由を記載できる仕組みとなっており、労使の対立があれば、ハローワークが最終決定を行うこととしている。とすれば、会社側の失業保険手続きはその一部に過ぎず、退職事由の記載をもって「損害賠償の対象たる違法性」があるのか、改めて疑問の念を強くする。
2008年11月1日土曜日
「非正規レジスタンス」読了
石田衣良「非正規レジスタンス」(文藝春秋 2008.8)
新聞記事をコピー&ペーストして、小説が書かれた印象ぬぐえず。確かに、それぞれのエピソードで非正規雇用等の抱える問題の深刻さ(母子家庭、ネットカフェ難民など)は描かれているが、いずれも当事者らの心境や背景がずしんと腹に落ちてくる感なし。最近、読み返していた鷺沢萠、高村薫などの一連の作品群と比べてしまうからかもしれない。
いずれにしても、現在進行形の問題という困難さを克服して、いわゆる「格差問題」を的確に描き出す力量をもった小説・映画の登場が待たれる。視野を外国に転じれば、ケン・ローチ監督の一連の作品にその可能性が見出されるのではないだろうか(近作として「この自由な世界で」)。
新聞記事をコピー&ペーストして、小説が書かれた印象ぬぐえず。確かに、それぞれのエピソードで非正規雇用等の抱える問題の深刻さ(母子家庭、ネットカフェ難民など)は描かれているが、いずれも当事者らの心境や背景がずしんと腹に落ちてくる感なし。最近、読み返していた鷺沢萠、高村薫などの一連の作品群と比べてしまうからかもしれない。
いずれにしても、現在進行形の問題という困難さを克服して、いわゆる「格差問題」を的確に描き出す力量をもった小説・映画の登場が待たれる。視野を外国に転じれば、ケン・ローチ監督の一連の作品にその可能性が見出されるのではないだろうか(近作として「この自由な世界で」)。
生活者の利便と営業時間規制
10月30日開催の経団連労働法セミナー(関西)を受講。テーマが労働時間問題のためか、参加者多数。お出しいただいた弁当のライス量の少なさに違和感を感じたのは私だけか?。
シンポジウムで登壇された神戸大学大内先生に感服。一番最後に「生活者の利便 対 労働者の保護」の問題状況をさりげなく指摘された手際の良さにほれぼれする。この指摘が「営業時間規制」をはじめとした経済規制につながる可能性を含んでいることに会場の中で何人、気がつかれたのか興味あり(それにしても、大内先生ご自身が「営業時間規制」について、どのような見解をおもちなのだろうか。いずれご見解をお伺いしてみたい)
和田肇先生が紹介された90年代以降のドイツ営業時間規制の展開について、関連文献調査の要がある。
シンポジウムで登壇された神戸大学大内先生に感服。一番最後に「生活者の利便 対 労働者の保護」の問題状況をさりげなく指摘された手際の良さにほれぼれする。この指摘が「営業時間規制」をはじめとした経済規制につながる可能性を含んでいることに会場の中で何人、気がつかれたのか興味あり(それにしても、大内先生ご自身が「営業時間規制」について、どのような見解をおもちなのだろうか。いずれご見解をお伺いしてみたい)
和田肇先生が紹介された90年代以降のドイツ営業時間規制の展開について、関連文献調査の要がある。
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